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【民泊コラム】変化が激しい民泊市場 〜民泊プロが2017-2018年のトレンドについて徹底解説〜

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初めまして、当研究所のシニアフェローを務めております、留田紫雲と申します。

2020年の東京オリンピックを控え、いよいよホテル・旅館など宿泊施設の不足が深刻となってきました。この問題の解決方法として期待を集める民泊。しかし、テロの懸念、騒音やゴミ問題など、不安の声もあります。また、詳しくは後述しますが、民泊新法の施行により様々な制限が課されることで民泊が投資として成り立たないのではないかという懸念の声もあります。

本稿では、2016年から2017年の民泊市場の変化について触れ、民泊として人気物件の特徴について、また民泊新法の制限があっても投資として成り立つ物件の活用方法、そして今後、物件を運用していく上でなくてはならないあるものについてご紹介します。

僅か1年間で物件数は3.3倍に。一方で収益性は…

まず初めに昨年の民泊市場環境について整理したいと思います。

2016年は、1月に国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(通称、特区民泊)が東京都大田区で施行されたり、ドラマ『拝啓、民泊様』が放映されたりと、民泊市場が世間からの大きな注目を集めた1年となりました。

民泊専門メディアのAirstairによると、2015年11月時点で民泊予約サイトのAirbnbに登録されている物件数は12,000件だったのに対し、1年後の2016年11月時点では40,000件を突破しました。

一方で気になるのは、収益性についてです。日本政府観光局(JNTO)によると、2015年から2016年にかけて、訪日外国人客数は1,973万人から2,403万人(推計値)に増加しました。しかし、物件数が3倍以上となっているため、1物件あたりの収益性が下がることが予想されます。

当研究所にて、東京23区にある民泊物件の2016年2月と2017年2月の平均収益額と平均稼働率を比較したところ、平均収益は17.1万円から13.9万円と19%減少、平均稼働率は69%から53%と、16%減少していることがわかりました。(図表1、2)

 

勝ち組と負け組がはっきりと分かれてきた。

果たして、民泊はこれからもう儲からないのでしょうか。さらにデータを紐解いていくと、以下のことがわかってきました。

図表3は東京23区にある民泊物件の、今年1月・2月の稼働率をマッピングしたものです(当研究所調べ)。これによると、全体の平均稼働率は51%ですが、稼働率20%付近と80%付近に物件が固まっていることがわかります。つまりは、物件数が増加してもしっかりと予約が埋まる勝ち組と、収益が悪化してしまう負け組にはっきりと分かれているということです。

なぜここまで大きな差がでてしまうのでしょうか。5つの要素が民泊における人気を左右していると考えられます。

  • エリア

賃貸でもそうですが、都心にある、駅に近い、便利な場所かといった立地の良さは、民泊でも重要なポイントです。1つ注意が必要なのが、観光地に近い、イベントがある、地名が有名といった民泊特有の立地条件もあるため、賃貸物件としての立地の良さと同じとは限りません。

  • 設備

こちらも賃貸と同じですが、特にトイレや浴室といった水周り設備のグレードが重要です。

  • 内装・インテリア

ここからは民泊特有の要素です。民泊では、住宅としてではなく宿泊施設として貸し出すため、高級ホテルやリゾートのヴィラのように、快適に感じる内装が大きく稼働率を変化させます。また、家具や家電などのインテリアのデザインやコーディネートも趣味嗜好に特徴を出すなど、大いに関係してきます。

  • 写真

民泊では、集客のほとんどがインターネットを介して行われます。また、賃貸とは違い事前に見学をするケースはほとんどないため、写真の要素や写りが重要です。いくら良い物件でも、写真によって良さが消えてしまっては検討から外れてしまいます。

  • レビュー

Airbnbではゲスト(宿泊者)とホスト(オーナー)とで相互にレビュー(評価)をしあうことで、安全性や快適さなどをアピールします。この評価が高いほど、集客に有利となります。評価項目は、正確さ(説明が十分にある)、ロケーション(立地)、コミュニケーション(対応)、チェックイン、清潔さ、コスパ、と6つに分かれており、総合的に評価されます。

以上、5つの要素によって、人気物件になるかどうかが決まるといっても過言ではありません。

今後は民泊運営も多様化される。

今年から来年にかけ、民泊の活用は間違いなく多様化していくでしょう。その大きな理由は、住宅宿泊事業法(通称、民泊新法)が来年に施行される可能性が高いからです。 民泊新法では、年間最大で180日以上の民泊運営が制限されます。また、現行では3万円だった罰金も100万円に引き上げを行うなど、これまでなし崩しだった違法民泊の取締りを厳しくすることが予想されます。

そのため、投資効果を考えた際に年間180日(稼働率49%)の運営以外で、何かしらの運営方法を探っていかねばなりません。

ここからは実際に弊社にあった相談事例をご紹介したいと思います。投資家はもちろん、ビルオーナー、マンションオーナー、不動産ディベロッパー、不動産管理会社、ハウスメーカーの方まで様々な立場の方からご相談がありました。

  • 民泊 + マンスリー

民泊と、マンスリー契約(定期借家契約)を組み合わせた活用法です。民泊だけでなく、企業の研修地や、外資企業の日本支社が近いといったマンスリー需要が見込める都市部を始めとした地域では、有効な活用法と言えそうです。

  • 民泊 + タイムシェア(時間貸し)

民泊と、会議室やスタジオ、ホームパーティーなどの用途で貸し出すタイムシェアを組み合わせた活用法です。建造物の用途がもともと事務所や店舗だった物件などは相性が良いかもしれません。

  • 一時民泊

年間180日しか運営できないが、そもそも一時的に民泊として運営するという活用法です。例えば、聖地巡礼などで一時的にブームが来てホテル・旅館などの宿泊施設が足りないエリアでは効果的です。また、不動産ディベロッパーなどで多いのは、建替え予定の共同住宅で、住人の方の退去を待っている間、他の空室を民泊で埋める目的で運営することです。また、リロケーションのように、転勤をする際に空いた期間を貸し出す場合も良いかもしれます。これらのように、180日しか運営できなくても利益が出たり、赤字を少なくする目的で民泊を行う場合も良いかもしれません。

  • 住居併用民泊

民泊新法には家主が実際に居住している物件の一部を貸し出す「家主居住型」と、それとは反対に誰も居住していない物件を貸し出す「家主不在型」の2種類があります。一般的には、投資として考えるなら後者の「家主不在型」が適切と言われています。しかし家主居住型でも、普通では得られるはずがない賃料収入が生まれるため、十分に価値が生まれるはずです。

  • 週末民泊

幕張メッセや東京ドームなど、毎週末のようにイベントが行われる地域では、週末だけ自宅を民泊として貸し出す活用法が考えられます。このような一時的に宿泊需要が急増する地域では、既存の宿泊施設だけでは供給量が足りず、割高な宿泊単価で物件を貸し出すことが可能になります。

以上のように、民泊新法が施行された後でも投資として成立しそうな運営方法はあります。

但し、現状では民泊新法の内容も見えない部分があり、今回ご紹介した方法が現実的には難しい可能性もあります。今後はしっかりと最新情報を取得し続けることが重要となります。

 

民泊が拡がるためには簡易で使えるシステムが必要

最後に、先述した多様な民泊での活用法を支えるシステムの重要性についてまとめたいと思います。

数年前までの民泊は、住居の写真を撮影して予約サイトに掲載して、ゲストからのメッセージ対応と清掃をしていれば、月で何万円から何十万円という利益が生まれる市場でした。それが市場の成長とともに徐々に勝ち組と負け組が明確に分かれるようになり、今後も合法的な投資として成功させるためには、煩雑な運営方法を取らなければなりません。完全に業者に任せることも可能ですが、運営コストは上昇するため、たとえ収益が出たとしても投資として成功することが難しくなっていきます。

そういった問題を解決するために、複雑な運営を、簡易化もしくは自動化するシステムが必要となってきます。例えば、複数の予約サイトに掲載することでゲストの間口を増やす方もいらっしゃると思いますが、複数のサイトを使い分けるなど運営面では大変になります。そこで、ボタン1つで全てのサイトでの料金変更や予約管理を行えたり、時期に合わせてプロモーションを自動的に行えるようなシステムが必要となってきます。

特に、民泊とマンスリー運営を組み合わせる場合には、それぞれのリードタイム(利用者の検討期間)が異なるため、在庫の表示をどうするかといった高度な問題も出てきます。また、民泊と時間貸しでは、ゲスト(借り手)の利用用途毎に送るメッセージの内容も異なるため、それを自動で切り分けたり、それぞれの予約サイトの収益を合算して簡易的に表示したりといったことも必要となってきます。またトラブルを防ぐ観点から、ゲスト毎に違う電子鍵を付与して、入退室情報を記録する必要もあるかもしれません。

以上のように、複雑な運営を行っていくためには、付随するシステムの進化が必須となります。民泊新法の成立が市場に与える影響はまだ不透明ですが、今後も訪日外国人客数が右肩あがりに伸びるとすれば、それに合わせて民泊市場も大きくなっていくと考えられます。これから民泊を始められる方は、しっかりとした情報収集と、周辺サービスを最大限活用しましょう。

【民泊関連の管理ツール】

URL URL サービス名
株式会社VSbias https://www.baberu.jp/  baberu
メトロエンジン株式会社 https://metroengines.jp/ 民間ダッシュボード
株式会社SQEEZE https://squeeze-inc.co.jp/ suite book
合同会社エアホスト http://www.airhost.co/ Airhost
Matsuri technologies https://www.matsuri.tech/ syn.m2m
サムライ・インターナショナル株式会社 http://pr.airprofits.com/ airprofit


■執筆者紹介

 
留田 紫雲 (とめだ しゅん)
民泊総合研究所 シニアフェロー
不動産ディベロッパーにて、外国人賃貸集客事業の責任者を経て、2015年11月に不動産×ITの事業展開する株式会社VSbiasを創業。テクノロジーの力で空間資産を解明・最大化させることをミッションとする。20167 同社を株式会社メタップスに事業売却し、最年少子会社社長として事業を推進している。

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