法律コラム

【連載】第5回 民泊新法とは?観光立国に向けて遂に新たな仕組みが生まれる

投稿日:2017年3月8日 更新日:

第4回のコラムでは,国家戦略特別区域の指定と自治体による条例制定以外の規制緩和の動きとして,旅館業法施行令の改正と新法の制定についてお話ししました。

今回は,厚生労働省と国土交通省が法整備に取り組んでいる,住宅に旅行者を有料で泊める民泊を解禁する新しい法制度,「住宅宿泊事業法案(仮称)」(民泊新法)について解説していきたいと思います。

第1回:  民泊って何? 法律のプロが話題の民泊について答えます。

第2回:  民泊って違法なの? 民泊が抱える法的な問題点とは

第3回:  民泊が合法的にできる国家戦略について徹底解説

第4回:  ある規制の緩和によって合法的に民泊がやりやすくなった

 

1 今国会での法案提出予定

国土交通省は,2017年3月,今国会に「住宅宿泊事業法案」(仮称)として法案を提出予定と見込まれています。

民泊新法はどのような内容になっているのか,まだ詳細は不明ですが,概要についてみていきたいと思います。

 

2 民泊の類型

民泊新法で提供されるのは戸建住宅,共同住宅です。ホテル,旅館は対象になりません。

民泊新法では,住宅が家主個人の生活本拠である「家主居住型」と,住宅に家主個人の生活本拠でない,または提供者が提供日に泊まっていない「家主不在型」との2つの類型に分けられています。

 

(1) 家主居住型

「ホームステイ型」とも言われていますが,住宅提供者が住宅に住みながら住宅の一部を利用者に貸し出します。

この場合の「住宅」は,住宅提供者個人の生活の本拠であり,原則として住宅提供者の住民票があることが必要です。また,提供日に住宅提供者が居住していることが必要です。そのため,住宅提供者の生活の本拠ではあるけれども,住宅提供者が旅行などで不在にしているときは家主居住型では貸し出しができませんので注意が必要です。

家主居住型では,住宅提供者が住宅を管理することが予定されています。

また,住宅提供者は民泊を実施するにつき都道府県知事への届出が必要になります。

 

(2)家主不在型

「家主不在型」は,個人の生活の本拠でない住宅(法人所有のものも含まれます。),個人の生活の本拠であっても提供日に住宅提供者が居住していない住宅を対象にします。

家主居住型では居住している住宅提供者が住宅を管理することができますが,家主不在型の場合には住宅提供者が居住していないので誰が住宅を管理して安全面・衛生面を確保するのかが問題になります。

そこで,家主不在型の場合には,住宅提供者が「住宅宿泊管理業者」に住宅の管理を委託することが必要になります。

家主不在型は,家主居住型と異なり,届出制ではなく許可制になるようです。届出は文字通り「届け出る」だけで足りるのに対して,許可制は届け出たうえに行政庁の「許可」が必要になるので当然ハードルは高くなります。

 

3 営業日数の上限

「民泊」を解禁するにあたり注目されていたのが営業日数の上限です。営業日数に上限を設けることで,旅館業界・ホテル業界との共存を図っているものです。

上限日数については,2017年3月1日に開催された自民党国土交通部会で「年間180日を上限とし,自治体が条例で日数を制限できる」という内容で決着しているようです。

ただし,条例で上限日数を制限できるとすると,極端に言えば「営業日数0(ゼロ)日」という条例もできかねず,「民泊解禁」は「絵に描いた餅」になってしまいます。そのため,条例で日数制限として「0日」は認められず,また日数制限できるのは民泊の解禁が騒音を生じるなど「生活環境の悪化」を招く場合に限定するようです。

 

4 住宅宿泊管理業者

現在,事実上実施されている「民泊」においても,民泊代行業者,民泊管理業者は存在していますが,何ら登録,許可を受けているものでありません。

このような状況では,代行業者,管理業者の適切な監督が行き届かず,住宅の適正な管理は望めず,民泊の安全面・衛生面を確保できません。

そこで,さきほど述べたように,「家主不在型」の民泊においては,住宅提供者は「住宅宿泊管理業者」に住宅管理を委託する必要があります。

そして,住宅宿泊管理業者は国土交通大臣の登録を受ける必要があり,登録がなければ住宅宿泊管理業をすることはできません。

住宅宿泊管理業者が衛生管理などの義務を怠った場合には,業務停止命令,登録取消などの行政処分,法令違反による罰則などが設けられる予定です。

 

5 住宅宿泊仲介業者

第1回のコラムでも紹介しましたが,「民泊」が普及した要因として「Airbnb」のような仲介サイト,仲介業者の存在があります。

そこで,民泊新法においても,住宅宿泊仲介業者は観光庁への登録が必要とされるようです。

民泊仲介大手の「Airbnb」は,民泊新法の成立・施行を見据え,年間営業日数を超えた物件をサイト上に表示できなくする仕組みを導入するなど,民泊新法に対応する予定のようです。

 

以上が「住宅宿泊事業法案(仮称)」,いわゆる民泊新法の概要です。

次回最終回のコラムでは,①マンション居室での民泊の問題点,②合法・違法の境界線,③無許可営業に対する規制についてお話ししたいと思います。

■執筆者紹介
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吉山晋市(よしやま しんいち)
弁護士法人みお綜合法律事務所 弁護士
大阪府生まれ 関西大学法学部卒業
弁護士・司法書士・社会保険労務士・行政書士が在籍する綜合法律事務所で,企業法務,不動産,離婚・相続,交通事故などの分野に重点的に取り組んでいる。

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